こたび録。

都内から一人旅

大磯から箱根湯本へ

晴天続きでどこかに行きたいと思いつつ、せわしない日々。


ぽっかり1日空いたので、一度行ってみたいと思っていた大磯へ出かけてみることに。


“思い立ったが吉日”を後押ししてくれるような、秋晴れの空。


昼過ぎに出発、横浜で東海道線に乗り換える。


大船あたりまで来るとだんだんと肩の荷が下り、旅の気分に切り替わってきた。


このまま東海道をずーっとどこまでも行けそうな気までしてくる。


景色もほどよくのどかになってきて、大磯駅に到着。


山を背にした小さな駅舎は、オレンジ色の瓦の三角屋根に白い壁。


ほっとするこぢんまりした雰囲気の駅前を抜け、まずは海が見たくて海岸のほうへ。


ふいに目に入った国道1号の標識。



住宅街の中にぽつりとカフェなどがあって、落ち着いた中におしゃれさを醸し出している。


海岸の入り口にはウェットスーツ姿にサーフボードを持った地元の男子高校生らしき2人。


波打ち際では、やはりウェットスーツ姿の中年男性が1人、海へ入る準備体操をしていた。


大磯では日常の風景なのだろう。


相模湾。湾の景色はなぜか落ち着く。



大磯は村上春樹氏の住まいがあることでも有名らしい。


どことなく浮世離れした雰囲気の町が、小説の世界を彷彿とさせるような気もしてくる。


しばらく海の空気を吸いながら砂浜をさくさくと踏んで歩く。


立ち寄らなかったが、周囲には鴫立庵や旧島崎藤村邸なども。


文化人たちがこの地を好む理由に、思いを巡らせてみる。


駅前に着く頃には、日が傾きかけていた。


松並木。浮世絵の中に立っているような錯覚に。


味のある壁画。やはり何か不思議な世界に迷い込んだよう。



今日は余裕があれば箱根まで行き、温泉に浸かりたいと思っていた。


15時半過ぎの熱海行き、小田原からは登山鉄道で、日没間際に箱根湯本へ到着。


駅周辺は、観光客が戻ってきているようで、若者たちのグループで賑わっていた。


さらに目的地までバスで10分ほど。


本数は少なく、小1時間の待ち時間。


薄暗く冷えてくる中、みやげ物屋を覗いたり、駅に戻ったりして、うろうろと待つ。


夕暮れの早川。少し紅葉も見られた。



数人の乗客とともにバスに乗り込む頃には、すっかり夜になっていた。


奥湯本入口のバス停を降りると、真っ暗な山の中に光る天山湯治郷の文字。


急坂を下って、広い敷地を歩き、ようやく湯場にたどり着く。


露天風呂の目の前は、切り立った崖に滝が勢いよく流れていて、野趣にあふれている。


滝の音を聞きながら手足を伸ばしてお湯に浸かると、遠くまで来た実感が押し寄せてきた。


山の濃い気配から、生気をもらっているような気がしてくる。


このまま泊まっていけたらと思うが、日帰りできるのもいいところ。


山腹のバス停で再びバスを待ち、来た道を戻る。


小田原駅で弁当とお茶を買い、車窓の夜景を眺めつつ食べ、21時到着。


秋、秋と思っている間に立冬。


秋の終わり、冬の始まりの旅になった。