こたび録。

都内から一人旅

観音崎から浦賀・久里浜へ

12月22日。


年内の仕事の目処が立ったので、1年の締めくくりに、観音崎へ。
以前横須賀に泊まった時、次は観音崎まで行ってみたいと思ったのだった。


夕方、仕事帰りに都内からそのまま向かい、馬堀海岸駅に着いたのは19時過ぎ。
日の暮れた駅前のバス停で、風に吹かれながらバスを待つ。


数人の乗客と一緒に、観音崎方面行きのバスに乗り込み、夜道を進む。


駅から離れるにつれ、建物は少なくなっていき、やがて窓の外は真っ暗に。


本当にこのバスで合っているのか、ちゃんと目的の場所で降りられるのか。
はらはらしながら、揺られること10分。


途中の停留所でちらほらと乗客は降りていき、車内も閑散としてきた。


真っ暗な道が続く中、「観音崎京急ホテル横須賀美術館前」のアナウンスが。


下車するのは私1人。


バス停に降り立つと、あたりは静まり返り、海の匂いが漂っていた。


ホテルエントランスの照明も派手ではなく、一人立っていると心細くなってくる。



フロントへ向かうが、ロビーの売店もすでに閉まり、ひっそりとしている。


泊まる部屋は、建物の一番端。


長い廊下には、ウェディングフォトや両陛下がご訪問された際の写真が飾られ、
由緒正しいリゾートホテルが重ねてきた歴史を感じる。



ホテル併設の有名なスパ〈SPASSO〉は、最終入館時刻が20時30分とのこと。
急いで荷物を置き、一度ホテルの中庭に出て、スパへの道をいそいそと向かう。


スパの受付に着いて、やっと他のお客さんに出くわした。
これから入る人も、まだ何人かいる様子。



浴室に入り、室内にも何種類かのバスがあったけれど、まずは露天風呂へ。


寒さをこらえて外へ出ると、目の前には夜の海が広がっていた。


遮るものが何もない夜空に、煌々と浮かぶ月。
海面のさざなみが、ざわざわと輝いている。


お湯に浸かりながら別世界のような景色に包まれて、東京湾を眺める。



部屋に戻って、明日の予定を考えたりしながら就寝。


こんな広々とした部屋に泊まるのは初めて。
そわそわしてしまい、なかなか寝付けなかった。




翌朝は、一面の窓からカーテン越しの光。


チェックアウトの前に、まずはボードウォークを散歩。



こんな自然の海岸を歩ける。




走水方面へ行くと、漁師町のような風情も。




写真を撮りたくなる雰囲気があちこちに。




国道16号。



美味しい魚が獲れそうな港。



走水方面は次のお楽しみとしてそこそこで切り上げ、


観音崎方面に進路を戻して、海辺を歩く。






行基の伝説で有名だという海蝕洞。


明治の頃まで、このあたりに観音寺というお寺があったそう。


なんとなく、霊験あらたかな空気に包まれている気がしてしまう。


海蝕洞から海側を見る。


緑がかった海の色がきれい。



舗装された道がずっと続いて、歩きやすい。


時折、散歩やジョギングの人とすれ違うくらいで人通りは少なかった。



とうとう観音埼灯台に来た。



岬の突端。


自然のままの地形を見られることが嬉しい。


珍しい手彫りの隧道を抜けて進み、



さらに広々とした海へ。




本日の目的地のひとつ、たたら浜に到着。


湾の出口に近いせいか、少し太平洋の雰囲気があるような気がする。


うまく撮れていないけれど、砂は白く海の色も明るい。


浜には家族連れと、持参のチェアで休むサーファーが1人。
それぞれの時間を過ごしている。



水仙の群生。みんなで海を見ているかのようにたくさん咲いていた。



ふと見ると、さりげなく灯台の形。




心洗われた気持ちで、空高く飛ぶトンビを見ながらホテルへと戻る。




チェックアウトを済ませ、バスの時間までロビーに座って海を見る。


ロビー右手は、高い天井まで全面ガラス張りのレストラン。
お昼どき、晴れた青い海を眺めながら食事をする人の姿が。


食事かお茶だけでも、また来てみたい。


ありがとう、観音崎京急ホテル。



昨夜は夜遅かったので路線バスだったけれど、今日はホテルのシャトルバスで。


馬堀海岸駅に着いたら、京急電車で次なる目的地、浦賀へ。


学校で習った「ペリー来航」の浦賀へ行ってみたい、という単純な動機。


終点、浦賀駅。少し雲が出て来た。



駅前の通りは港町の風情。



せっかくここまで来たのだから、〈ペリー公園〉なる場所にも行っておきたい。


地図を見ると、浦賀から行くには遠いようだが、歩いてみることに。


有名な「浦賀の渡し」も記念撮影。



渡しの向こう岸。こちらとあちらで、対になる神社があるそう。



ペリー公園まで本当にたどり着けるのかと不安になりつつ、1時間ほどひたすら歩く。


坂を登ったり下ったり、トンネルを抜けたり、ヨットハーバーを通り過ぎたり。


歩いている人はほとんどいなかった。



逆光だが、よく見ると「開国橋」。




そして、ペリー公園の浜に到着。



それほど広くない砂浜は、生活に溶け込んでいるような、落ち着いた雰囲気。



ペリー公園の記念碑。



浜の後ろ、道路を挟んだところにはペリー公園。


これで、「ペリー来航」の現地に立てたといってもよいはず。


園内にある無料の〈ペリー記念館〉を少しだけ見学。


帰路に就くために久里浜駅方面へ。



昨日からうろうろしてきた海岸線を離れ、〈くりはま花の国〉を横目に見ながら歩く。


道沿いに、園芸用の花や植物、苗を売っているお店がちらほら。


駅に近づくにつれて人通りも多くなり、商店街もあって活気づいてくる。



午後3時くらい。


鎌倉に寄り道するのもいいかもとJRの駅を探したが、迷子に。


欲張るなというお告げかも。


京急久里浜駅から横浜乗り換えで帰ることにする。



駅ビルに入ると、スーパーに地元産の野菜がたくさん売られていた。


通り抜けて、2階の改札へ。



たくさん歩いてお腹がすいた。


電車を待つあいだに、駅ナカの立ち食いそば(かきあげ)を。




1年のおさらいのような旅の締め。


おいしかった。

大磯から箱根湯本へ

晴天続きでどこかに行きたいと思いつつ、せわしない日々。


ぽっかり1日空いたので、一度行ってみたいと思っていた大磯へ出かけてみることに。


“思い立ったが吉日”を後押ししてくれるような、秋晴れの空。


昼過ぎに出発、横浜で東海道線に乗り換える。


大船あたりまで来るとだんだんと肩の荷が下り、旅の気分に切り替わってきた。


このまま東海道をずーっとどこまでも行けそうな気までしてくる。


景色もほどよくのどかになってきて、大磯駅に到着。


山を背にした小さな駅舎は、オレンジ色の瓦の三角屋根に白い壁。


ほっとするこぢんまりした雰囲気の駅前を抜け、まずは海が見たくて海岸のほうへ。


ふいに目に入った国道1号の標識。



住宅街の中にぽつりとカフェなどがあって、落ち着いた中におしゃれさを醸し出している。


海岸の入り口にはウェットスーツ姿にサーフボードを持った地元の男子高校生らしき2人。


波打ち際では、やはりウェットスーツ姿の中年男性が1人、海へ入る準備体操をしていた。


大磯では日常の風景なのだろう。


相模湾。湾の景色はなぜか落ち着く。



大磯は村上春樹氏の住まいがあることでも有名らしい。


どことなく浮世離れした雰囲気の町が、小説の世界を彷彿とさせるような気もしてくる。


しばらく海の空気を吸いながら砂浜をさくさくと踏んで歩く。


立ち寄らなかったが、周囲には鴫立庵や旧島崎藤村邸なども。


文化人たちがこの地を好む理由に、思いを巡らせてみる。


駅前に着く頃には、日が傾きかけていた。


松並木。浮世絵の中に立っているような錯覚に。


味のある壁画。やはり何か不思議な世界に迷い込んだよう。



今日は余裕があれば箱根まで行き、温泉に浸かりたいと思っていた。


15時半過ぎの熱海行き、小田原からは登山鉄道で、日没間際に箱根湯本へ到着。


駅周辺は、観光客が戻ってきているようで、若者たちのグループで賑わっていた。


さらに目的地までバスで10分ほど。


本数は少なく、小1時間の待ち時間。


薄暗く冷えてくる中、みやげ物屋を覗いたり、駅に戻ったりして、うろうろと待つ。


夕暮れの早川。少し紅葉も見られた。



数人の乗客とともにバスに乗り込む頃には、すっかり夜になっていた。


奥湯本入口のバス停を降りると、真っ暗な山の中に光る天山湯治郷の文字。


急坂を下って、広い敷地を歩き、ようやく湯場にたどり着く。


露天風呂の目の前は、切り立った崖に滝が勢いよく流れていて、野趣にあふれている。


滝の音を聞きながら手足を伸ばしてお湯に浸かると、遠くまで来た実感が押し寄せてきた。


山の濃い気配から、生気をもらっているような気がしてくる。


このまま泊まっていけたらと思うが、日帰りできるのもいいところ。


山腹のバス停で再びバスを待ち、来た道を戻る。


小田原駅で弁当とお茶を買い、車窓の夜景を眺めつつ食べ、21時到着。


秋、秋と思っている間に立冬。


秋の終わり、冬の始まりの旅になった。

横須賀から馬堀海岸へ

少し煮詰まってきた日常を抜け出したくて、
「横須賀」という響きだけで、ふらりと出かけてみることに。


東京に25年以上住むが、三浦半島へは一度も行ったことがなかった。


都内から横浜で乗り換え、京浜急行で横須賀中央駅へ。


駅から徒歩5分ほどのビジネスホテルに1泊のチェックイン。


無計画な旅でも、ここだけは行こうと決めていた『横須賀温泉 湯楽の里』。


荷物を置いて身軽になったので、再び京急に乗り馬堀海岸駅へ。


駅舎を出て、少しずつ暮れてくる住宅地を海の方へと向かう。


観光地の雰囲気はなく、ちょっと不安になりながらスマホを頼りに。


15分ほど歩くと海辺の通りに出て、ちょうど日が沈むところを見られた。


時間帯のせいか、人も少なく静かな遊歩道。


ジョギングや散歩の人がちらほらと。


少しだけ海を眺めて、通り沿いにある『湯楽の里』へ。


地のものを置いている売店をちょこっと覗いて、入館。


地元っぽい人たちが憩いに来ているようで、アットホームな賑やかさ。


露天のお湯にしばし浸かった後、施設内の食堂に入る。


窓際のカウンター席で、海を見ながらカレーうどん。


次は観音崎もいいかな、と心を遊ばせる。


感じの良い店員さんに会計してもらって、外へ出たらすっかり暗かった。


駅への帰り道では、澄んだ夜空に浮かぶ半月。


少し冷えてきたが、温泉のおかげで体はぽかぽかしている。


静かな住宅街を抜けて、駅前の明かりにほっとしつつ、乗車。


横須賀中央駅に戻ったものの、まだ時間に余裕がある。


ヴェルニー公園まで大回りしてホテルに向かう散歩がてらのコース。


迷いつつ公園に着き、また海を見る。


湾内の静かな波音。


海岸沿いに建つショッピングモールの明かりに引き寄せられるようにして入る。


猿島行きツアーのパンフレットなどを眺める。


ミスドを見つけて、フレンチクルーラーとチョコファッションをテイクアウト。


懐かしいものが食べたくなった。


初めて知った「どぶ板通り」なる通りを通ってホテルへ。


基地の街の空気を感じる。


通りからは、遅くまで賑やかな英語の話し声が聞こえていた。



ぎりぎりに目覚めて、ホテルの朝食。


スクランブルエッグ、味噌汁、ご飯、フレンチトースト、果物、コーヒー。


昼前にチェックアウト。


新しくはないが、よそよそしくなくて、落ち着ける雰囲気のホテルだった。


観光客で賑わい始めた昼のどぶ板通りを抜けて、汐入駅から帰途に。


1時間ほど電車で移動する間に、日常へ戻る心の準備。